Databricksではじめる機械学習:ランダムフォレスト(前編)
- mellowlaunch
- 8月25日
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はじめに
機械学習を学び始めると、まず出会う代表的なアルゴリズムのひとつが「決定木」です。決定木は条件を枝分かれさせることで予測を行うシンプルなモデルですが、単一の木では「過学習しやすい」「データの分割条件に敏感」といった課題があります。そこで登場するのが、複数の決定木を組み合わせた「ランダムフォレスト」です。多数の木を使い、予測時に多数決や平均を取ることで安定した結果を導く仕組みを持ちます。本記事の前編では、ランダムフォレストの学習対象の特徴を整理し、実際のユースケースについて解説していきます。
学習対象の分析について
ランダムフォレストは「ブートストラップ」と呼ばれる手法で学習データをランダムに分割し、それぞれのサブセットに対して決定木を構築します。各木は独自に学習を行うため、一部の特徴量やサンプルに偏ることなく、多様な視点を持つ木の集合体が完成します。そして予測時には、それぞれの木が出す結果を「多数決(分類問題)」または「平均(回帰問題)」によって統合します。
この仕組みにより、単一の決定木で発生しやすい「特定の条件に過剰にフィットする」現象を避けられるのが大きな強みです。さらに特徴量選択が自動的に行われるため、前処理の工数を減らせるのも実務上の利点です。特徴量の数が多い場合でも、各木が異なる特徴を参照するため、ノイズや外れ値の影響を抑えつつ安定した性能を引き出せます。
Databricks環境で扱うデータは数万件から数百万件規模になることも少なくありません。こうした大規模データにおいても、ランダムフォレストは「並列化に強いアルゴリズム」であるため、分散処理基盤のSparkと相性が良いといえます。学習対象のデータが複雑であっても、木を多数組み合わせることで全体として高い汎化性能を持つモデルが構築できます。
ユースケース
ランダムフォレストは、その「高い精度」と「安定した汎化性能」から、さまざまな業界で利用されています。以下では代表的な分類タスクと回帰タスクのユースケースを紹介します。
分類タスク
小売業:顧客の離脱予測(churn分析)に活用されます。「サポート問い合わせが多い」「契約タイプがプリペイド」といった条件から、解約リスクを事前に検出し、優良顧客の引き止め施策に役立てられます。
金融業:ローンの返済遅延予測に用いられます。年齢、収入、過去の返済履歴といった特徴量を基に、顧客の信用スコアリングを強化できます。
医療:がんの有無判定や疾患スクリーニングに応用されます。検査値や患者属性を入力として「疾患あり/なし」を分類し、医師の判断を補助します。
製造業:製品が良品か不良品かを判定する検品工程を自動化できます。画像データやセンサー情報を入力として、不良品検出を高速化します。
HR(人事):求人応募者の合否予測に活用され、採用の効率化に寄与します。応募履歴やスキルデータから合格可能性を推定します。
回帰タスク
不動産:物件の価格推定に用いられ、査定や価格提示の基盤として機能します。立地や築年数、設備条件など複数要因を同時に考慮できるのが強みです。
マーケティング:広告費に対する売上予測に利用され、ROI(投資対効果)の最適化に役立ちます。複数チャネルのデータを扱っても安定した予測を可能にします。
IoT/気象:温度や湿度の将来予測に応用されます。センサーデータを扱い、設備の自動制御や異常検知の基準を作ることができます。
Webサービス:ユーザーの滞在時間予測に活用され、パーソナライズされたコンテンツ配信を支援します。
このように、分類・回帰どちらの課題にも柔軟に対応できるのがランダムフォレストの魅力です。
まとめると
ランダムフォレストは、複数の決定木を組み合わせて多数決や平均を取ることで、安定かつ高精度な予測を実現するアルゴリズムです。単一の決定木では避けられない過学習や不安定さを克服し、ノイズや外れ値の影響を受けにくいという強みを持っています。さらに、Databricks環境と組み合わせることで、大規模データに対してもスケーラブルに学習を進められる点が実務上の利点です。小売や金融、医療、製造、不動産、Webサービスなど多様な分野での活用事例が示すように、ランダムフォレストはビジネス課題に直結する有効な手法といえます。まとめると、ランダムフォレストの前編では仕組みとユースケースを理解し、後編ではDatabricksでの実装や評価方法を確認する流れへとつながっていきます。
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